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「今回は容疑者を絞りやすそうだぞ、神崎。付き合いのあった暴走族グループが、既に割れているそうだ。一人ずつ引っ張って、事情徴収すれば直ぐに終わるだろうな」
こともなげに言う濱田に、神崎は黙って頷いた。
直ぐに終わる? 何が終わるのだろう? 終わりのある仕事なのか?
「そうだ、これから交通課に寄ってグループのたまり場を聞いてくるんだが、ついでに例の話をしといてやるよ」
「えっ?」
「合コンだよ」
たった今聞かされた事件の経緯と、合コンを同列に出来る濱田の神経に、神崎は無性に腹が立った。
しかし、大人げない行動をとるほど自分を抑えられないわけではない。
長い付き合いだ。努めて平静を装っても濱田には、神崎の私情など見通されている。解っていながら、わざと掻き回してくるのだ。
「凶行に走る犯罪者の現実と、自分の現実を混同するな。気持ちを切り替えるんだ」
また、言われてしまった。今回は、隠し通せると思っていたのに。
悔しさに神崎は、唇を噛んだ。
聞き込みに行くため、一旦自分のデスクに戻ろうとした神崎の後を早川が急ぎ足で追いかけてきた。
「今回、自分とチームです。濱田さんはオブザーバーに回るそうですから」
早川の報告に、神崎は肩をすくめた。濱田は最近、外回りを若い者に任せてデスクで仕事をすることが多い。確かに、まとめ役がいた方が仕事に無駄がないのだが。
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