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「ええ、ゲームコーナーの近くのトイレの前で。届けてくれるのかな、と思ったら、手に持ったまま、エレベーターに乗りました」
「それじゃあどこに行ったのかわからないですよね」
「たぶん、屋上だと思います。エレベーターが、そこで止まったので」
ずいぶん、曖昧な情報だ。お客様に伝えるには不十分すぎる。
「ちょっと俺、屋上行ってきます」
レジカウンターを飛び出すと、足がもつれた。
「うおわ?!」
女の子たちが俺の脚にしがみついている。
「見つかったんですか?」
いつの間にか、そばに立っていた母親が俺に迫る。
「あの、まだ未確認なんですが……屋上にあるかもしれないので、見てまいります」
こちらでお待ちください、と続ける。
「一緒に行きます」
「いや、でも……」
お客様を引っ張り回すのは気が引ける。しかし、よほど自分たちで確かめたいのか、三人は引き下がらない。
仕方なく、一緒にエレベーターに乗った。女の子たちは、もう泣いてこそいなかったが、しゅんと萎れている。
「大丈夫だよ、どこかに落ちていたら、必ず見つかるから」
かがんで、そういうと、
「ほんとに?」
と涙声で聞き返す。
「うん」
答えたものの、持ち去った中学生がそのまま身につけていたら、と不安がよぎる。
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