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パン、パパン、パン、パパン。
威勢のいい手拍子で、目が覚めた。
ステージで、ゴスペルコンサートが始まっている。
「えっ、いま何時!?」
休憩時間にここへ来て、眠りこんでしまったらしい。腕時計に目をやると、14時を過ぎている。ってことは、1時間オーバー?
「やっべー」
まだ朦朧としている頭を軽く振り、起き上がろうとしてまた驚く。なんとコンサートのために用意された、もみの木にもたれて寝ていたらしい。
我ながら、なんてところで昼寝してしまったんだろう。
不思議なことに、シャツ一枚で眠っていたのに、体はぽかぽかと暖かい。
パン、パパン、パン、パパン。
ヘイル ホーリ クイーン エンスローダバブ!
オゥ マーリーアッ!
ゴスペルのリズミカルな歌声のなか、自分が何か握っていることに気づく。
なんだっけ?
手を開くと、薄い紙に包まれた金色の飴のような菓子がふたつ、現れた。
花の蜜を凝縮したような甘い香りに、何か大切なことを忘れてしまったような、切ない気持ちになる。
松村さんと食おう。
丹波さんの分は無し。
うっかり寝落ちてしまったことは、素直に謝るしかない。
腹をくくって、エレベーターへ歩いていく俺の背に、ゴスペルの掛け合いパートが響く。
トライアンフ オール イ チェールピム (チェールピーム!)
シングウィズ アス スウィート セラピム (セーラーピーム!)
なぜか振り返ってしまったけれど、やっぱり何も思い出せないまま、エレベーターに乗り込んだ。
(おわり)
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