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俺が言うと、はあい、と気持ちのいい返事が返ってきた。貧困や虐待、といった昨今の暗いニュースとは関係がないように見える。いやいや、普通に見えるけど、実は困窮している人、というのも多い。だからこそ、根が深い問題で……、なんて考えていると、
「あなたは、食べましたか」
老人が、俺を見つめた。
「え? あ、昼飯なら、これから、パンでも買って食べます……」
老人の手が、肉まんをふたつに割った。
「どうぞ」
と、半分差し出される。
「一緒に食べてくださいませんか」
そう微笑まれて、なんだか心の奥がぽうっと暖まった。
「はい……」
結局、俺は老人の肉まんを半分もらい、その場でかぶりついた。
「でね、そのとき、すっごい不思議だったんですよ。俺があげたのに、その何倍も、もらった気持ちになって」
「へえー」
丹波さんは、散らかったラッピング用品を片づけながら相槌を打つ。
「なんなんすかねえ」
「斉木が傲慢だったからだろ。その人たちを助けてあげた、と思ったからだよ。そのおごりに、気づかせてくれたんじゃないか」
「そんな嫌みな風じゃなかったっすよ」
「いい人だったからよかったけど、あんまりお客様の私情に首突っ込むなよ」
ご意見ごもっともだが、丹波さん自身、デパート役員の写真と照合してたくせに。
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