妄想痴漢列車3―トナカイの俺を攫うのは君の役目でしょ?―

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 そんなこんなで、12月24日はあっという間に来てしまう。見せつけるように、恋人達が沢山だ。リア充爆ぜろ。  今日はバイト最終日。20時閉店だけど、19時で上がっていいって言われている。  本当ならその後で和樹の家に行って、二人で過ごすはずだった。  今日は和樹の両親は父方の実家に行くから不在だって言っていた。誘われたけど「亮二と約束あるから」って言って断ったんだって。嬉しかったのに、今は悲しい。  真っ白く燃え尽きたような俺は、やけくそでトナカイをしていた。夕方になって、空が薄暗くなってくる。18時が近い頃、俺は背中をツンツンされた。 「正木くん」 「秋川!!」  俺は驚いて声を上げてしまった。そこには可愛い私服姿の秋川がいる。明らかに「これからデートです」って感じだ。  胸に色んな物が刺さってくる。その相手は和樹なのか。俺に声をかけてきたのは、俺を牽制しにきたのか。不安と緊張で心臓痛い。 「正木くん、ちょっとだけいい?」 「え? あの…」 「大事な話。お願い!」  顔の前で手を合わせる秋川に、俺は負けた。30分の休憩をもらって、俺は秋川について近くのマックに座った。 「話って…なに?」     
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