妄想痴漢列車3―トナカイの俺を攫うのは君の役目でしょ?―

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「実は、一つ上の先輩でさ。ちょっと、悩んでたんだ。ほら、先輩卒業しちゃうし。それで、和樹に話し聞いてもらっててさ」 「え? あっ、そうなの?」  俺達は高校2年。来年には3年に上がる。秋川の彼氏は、来年3月で卒業か。それは、悩むよな。 「和樹って、話しやすいし聞いてくれるから頼っちゃって。でもそれで、正木くんと喧嘩したって、今度は和樹が凄く落ち込んでてさ。あいつ、そういうの全部タイムに出るんだよね。だからここ数日ボロボロ」  なんて笑っているけれど、俺的にはあまり笑えない。 「ごめんね、誤解させて。私も少し軽率だった。それで、今日和樹迎えに行くって言ってたから、受けてあげてね」  申し訳なく笑い、思いきり頭を下げた秋川に、俺の方が申し訳無く頭を下げた。  その時、マックに一人の男が入ってきて、秋川は「あっ」と嬉しそうに声を上げる。見ればそれは3年の水泳部の先輩だ。 「話終わったか?」 「うん」 「それなら行くぞ。ケーキ買うんだろ?」 「直ぐそこのお店のがいい」 「別にいいけど」  直ぐそこのお店は俺のバイト先のお店です。  秋川は幸せそうに可愛い笑顔を浮かべながら、俺に手を振る。俺もそれに、力なく手を振った。  俺の勘違い。俺の早とちりだった。それで和樹をなじって、傷つけてしまった。     
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