わがままな人

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それでも何故か篠原さんの視線が相変わらず僕へと注がれていることは分かる。 「そういうことじゃないわ」 「じゃあどういうこと?」 尋ねると、篠原さんは「はー」と大きなため息を零した。 そして先ほど、今日が僕の誕生日だと言った時と同じような、仕方がないという口調で答える。 「あなたに誕生日プレゼントをあげたかった人もいるということよ」 僕は再び篠原さんの瞳に視線を向けていた。 「欲しいものを欲しいって言って欲しい。やりたいことをやりたいって言って欲しい。そう思っている人だって居るのよ。それなのにあなたは、そういうのは全部わがままだからしないって言う」 篠原さんの眼差しは強く、だけどなんだか脆く見えた。 「……そんなふうに思う人いないよ」 思わずそう言い返す。 しかし、僕の断定的な口調にも、篠原さんは怯まなかった。 「いるわ」 勝手なことを言う人だな、と思った。 何の証拠もないくせに。 僕のことそんなに知りもしないくせに。 それなのに...... ここまで言ってくれるのだ。 「……篠原さんは優しいね」 ポツリと呟いた僕の言葉に、篠原さんは首を振る。 「違うわ。ただわがままなだけよ」 その返事を聞いて、僕は小さく笑った。     
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