かすみよ

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かすみよ

その日、俺は古くからの友人である京の眼鏡を盗んだ。 京は別に視力が悪いわけではなかったのだが、最近スマホを買ってもらい、よく画面を眺めているようになったので、心配した父親からブルーライトカットの入った眼鏡をプレゼントされたのだ。 それを知っていながら、俺は京が教室で居眠りしている時にこっそりと奪い、壊して捨てた。 後にこの行動をひどく後悔する事になるのだが、この時は俺も冷静ではなくて、気付いたらもう取り返しがつかなくなっていた。 あれから、京は学校に来ても殆ど誰とも会話を交わさない。 いつも教室の自分の席に静かに座り、虚ろな瞳でぼんやりと窓の外を眺めている。 俺が眼鏡を盗んだせいだ。 俺は悩んだ結果、他の友人や教師に、そのことを告白した。 しかし誰も、俺を強く責める人はいなかった。 「仕方ない」 「気持ちは分かるよ」 中には、こんな言葉を掛けてくる人も居た。 「京くんのためだったんでしょ」
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