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「誠にいちゃん! スイハンジャーごっこ、もういっかい!」
じいちゃんちの居間で、猛がおもちゃの剣をふりまわしている。
猛はオレのとうちゃんの妹の絵里さんの子。てなわけで、オレのいとこ。
保育園の年長なんだけど、マイブームは、毎週日曜にテレビでやってるスイハンジャーのなりきりごっこらしい。
「え~。ちょっと待てよ、猛。にいちゃん、みかん食ってからな」
猛に背を向けて、オレはこたつの上でみかんの皮をむいた。と、見せかけてふり返って、猛の背中にかじりついて、剣を奪い取る。
「はっはっは。スイハンジャーめ! オレは怪獣ダマクラガエシ。おまえの剣を取ったからには、きょうからオレが、スイハンジャーだっ!!」
「え~っ!? 誠にいちゃん、ひどい~っ!!」
猛の剣の持ち手のボタンを押すと、シャランと効果音が流れて、剣先がキラキラ光った。
「へぇ~。この剣、テレビのとそっくりじゃん。すっごい性能いいな~」
なんて、目をかがやかせちゃうのは、オレもヒーローものが好きだから。
けど、さすがに小六にもなると、クラスメイトたちはヒーローの話なんかしない。まわりは受験とか、サッカーとか、恋とか。まぁそんな話題ばっか。
世の中には、白黒つかないことが多い。
だけど、ヒーローものは、なんでも白黒つけてくれる。
どこからどう見ても、正義は正義。
悪は悪。
だから、気持ちいい。
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