悪はだれだ?

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「誠は、面倒見がいいから、正月は絵里もラクができていいのう」  じいちゃんが日本酒のビンを手酌しながら、カラカラと笑った。昼間っからのお酒だけど、お正月だから、だれもとめない。  絵里さんが流しでお皿を洗いながら、「ほんにな~」とあいづちをうつ。 「あはは~。オレのほうが遊んでもらってるようなもんだけど~」と愛想笑いしながら、まんざらでもなかった。  オレんちは、両親が離婚している。  だから、とうちゃんとは正月かお盆にしか会わない。とうちゃんと会うときはかならず、このとうちゃんの家でもある、じいちゃんちにつれていかれる。  そこに何日か泊まって、お母さんの待つ花田(はなだ)に帰る。それがオレの正月のすごしかた。 「しかし、誠はいつ来ても、チビでガリだな~」  じいちゃんにお酒をついでもらいながら、とうちゃんがため息をついた。  土建屋をやっているとうちゃんは、腕も肩もがっちりとしている。けど、ビールの飲みすぎで、お腹はぽっこり。とうちゃんからして見たら、オレはひょろひょろのもやしだ。 「あの女に、ほとんど食べさえてもらえてないんだろう?」 「まったく、あの母親はなにを考えとるんや。誠をむりやりつれ去って。わしらから、ひきはなしおった。あれは誘拐と同じやで」  じいちゃんも、おでこのしわを深くして、白い眉をしかめる。  あ……この流れヤだな……。
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