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「ふつうに食べてるけど」とオレが口をはさんだところで、おとなたちはもう何もきいていない。
身長って、わりとコンプレックスなんだけど……。
オレはクラスの男子の中で一番背が低い。耳が大きくて横に広がっていて、口も大きいせいで、よく「サル似」って言われる。
「あの女は、昔っからそうだ。家事も育児もろくにしない、根っからのナマケモノだ。誠、ちゃんと面倒見てもらえてるのか? もらえてないんだろう?」
「服も。そないに、ひざのすりきれたスウェットなんぞ、はいとらんで。あした、ばあちゃんにええもんこうてもらい」
「誠君、イヤなことがあったら、なんでもうちに言うてきてよ~。お父さんもじいちゃんもばあちゃんも、わたしも、誠君の味方だからね」
そう言ってくれたのは、絵里さん。
口を横に開いて、オレは「なはは~」と愛想笑いした。
こたつの前で、石油ストーブが暖かい熱を出している。部屋にただよう、ほのかな灯油のにおいは、濃縮された熱のあかし。
駅伝がはじまると、おとなたちはテレビにくぎづけになった。
人の声がとびかう明るい部屋。
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