2話

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志岐家、といえば国内で知らない者は殆どいないであろう名家中の名家だ。いくつもの娯楽施設を経営し、その全てが最高級と言われるもので、国内はもちろん、海外でも有名なセレブたちとのパイプを持つその家の現当主、志岐 遼と接点を持ったのはほんの少しの興味だった。 大学の入学式、彼だけが明らかに周りと違っていた。目を惹く容姿は勿論だが、人を寄せ付けない雰囲気の中にある威圧感は会場の注目を集めていた。 棗の実家である藤屋家も呉服屋から始まり、現在ではアパレル事業を主に展開している。名家と呼ばれるくらいには地位も資産もあるし、その整った容姿に惹きつけられて近づいてくる人だって少なくなかったが、彼を見て棗は初めて自分を偽物だと思ったのだ。 「なあ、俺、藤屋 棗。よろしくな、遼くん。」 初めて声をかけた時、無表情ながらもあからさまに嫌そうな雰囲気を出した遼だったが、構わず隣の席に座る。離れられたら追いかけようと思っていたが、彼はそこから動くこともないまま、講義室に入ってきた教授によって授業が始められた。
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