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それからも言葉が返ってこないことを分かりながらも暇があれば遼の隣に並んだ。そんな棗を、友人は凄い凄いと褒めたが、別にいい気はしなかった。
仲良くなれるとは思っていない、ただ、志岐 遼という人間のことが知りたくなってしまったのだ。
そんな生活をすること1年、突然実家から呼び出され、連れられるがまま向かったのは立派な葬儀場。当時の志岐家当主の葬儀だった。朝、自室で倒れていて、既に事切れていたという話だったが、それが本当かは分からない。死人に口なし、どうとでも改竄できてしまうのだから。
志岐家に夫人はいない。次男を産んでその時に亡くなったのだ。参列していた噂好きな奥様たちの言葉が勝手に耳に入ってくる中、両親の後に続いて会場に入れば、1番に目に付くのは喪主の席で参列者に挨拶をしている遼だった。
じっと彼を眺めながら、ふと気付く。次男らしき人物が見当たらないのだ。席を外しているのかとも思ったが、葬儀の始めから終わりまでその場を取り仕切っていたのは遼だった。
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