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「遼くん、ご愁傷様。あとお疲れ。」
あの日から暫くして、また講義室に現れた遼に1番に声を掛ける。周りの視線は自分たち2人に釘付けだ。志岐家の当主が亡くなったのはニュースでも取り上げられた。自分たちが何か少しでも口を滑らせば、周りはそれを拾い、あっという間に広まってしまう。
「ああ。先日はどうも。」
そんな中で、やっと返ってきた言葉に思わず固まってしまったが、すぐに頭を回して会話を繋げる。
「いや、とんでもないよ。ねえ、遼って呼んでいい?てか呼ぶから、俺のことも棗って呼んでよ。な?」
突拍子もなかった自覚はあったが、これは少なからず彼に近づくためのチャンスだ。押し切るように言葉を投げかければ、はあ。と小さく息を吐かれた。
「………気が向いたらな。」
少し砕けた口調を向けられれば、飛び跳ねそうなほど嬉しかった。
それからもしつこい程に付いて回っては話しかける棗に対して、遼は少しずつであるが言葉を返すようになっていた。
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