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「横になってろ、辛いだろ。」
「寝るのは飽きたから。それより時間は?遅刻はダメだよ。」
生憎、アキの自室であるここに時計はない。携帯電話なども持っていない為、現在の時刻を教えることができない。
「知らない。迎えがこないってことは、まだ余裕があるってことだろ。それかもう手遅れか。」
あからさまに興味のなさそうな顔と声でそう言うハルは現在大学院へと通っている。学業が本分の学生にはあるまじき態度であるが、本人からすればあんなに面倒な場所はないらしい。
「一緒に居られるのは嬉しいけど、ちゃんと行かないとあの人に怒られるよ。そうしたら、ここに来れなくなるでしょ。それは嫌だな。」
寂しそうな表情を作れば、ハルが観念したように小さく息を吐く。冗談2割、本気8割ではあったが、その気になってくれたようだ。彼は布団から抜け出して立ち上がり、乱れた浴衣を直すことのないまま、障子を開ける。
「帰ってきたら抱き潰すからな。煽った責任は取れよ。」
口角を微かに上げ、不穏な言葉を残して部屋を出て行く。煽ったつもりはなかったのに、と心中で呟きながら、早く帰ってくればいいのに。と思う自分に苦笑をした。
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