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講義終了と共に、鞄を持って席を立つ。
「遼!なにさっさと帰ろうとしたんだよ!飯行こうぜ!!」
今日の講義は午前中で終わりの為、早く帰ろうと講義室から出ようとすれば、後ろから大声で呼び止められる。そのあまりの騒がしさに眉を顰めて振り返れば、大股でハル、もとい遼(ハルカ)の方へ向かってくる青年。先の大声のせいか、残っている生徒たちの視線は青年と遼自身に向けられていて何とも居心地が悪い。
「うるさい。俺は帰る。」
追いつかれる前に踵を返して廊下を正面玄関へと歩くが、相手は足を早めて隣に並ぶと、遼の態度など関係なく、よく通る声で喋り始める。
「なんだよ。たまには付き合えよ。やっと自由じゃん!どうせなら女の子誘ってさ!」
隣の青年、藤屋 棗という彼はよく目立つ。緩くパーマの掛かった金髪を遊ばせ、耳には無数のピアスが揺れている。性格が良くも悪くも軽く、常に周りには人が溢れているような、遼としては懐かれる覚えもなく関わりたくない正反対の人種なのだが、いかんせん、棗がどんなに冷たくしようと忠犬さながらについてくるのだからどうしようもない。
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