番外~おお、誇り気高き草原の民よ~(前編)

2/26
185人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
滑らかなシーツに包まれて、その心地好い肌触りに眠りながらも笑みが零れる。 窓からは涼しげな風が入り、気持ち良くうたた寝をする愛美の肌を撫でていた── 「マナミ……」 「…ん……」 聞き慣れた声が耳の傍で囁く。 「マナミ……」 「んん……」 愛美は夢の中で返事をしていた。 お寝坊な愛美の仕草にクスクスと笑う声がする。 その声が吐かれる唇はシーツから覗く愛美の肩に優しく押し当てられていた。 午前に一仕事を終わらせたザイードは、昼寝をする愛美の様子を訪ね、居室に戻って来ていた。 起こしたいけどゆっくり休ませてもあげたい。 二つの想いを抱えながら、ザイードは愛美に悪戯を仕掛ける。 気持ち良く眠り込む愛美を幸せそうに眺めては、その眠りを覚ますように唇で愛美の肌を愛撫していた。 甘く吸い付いては軽い音が鳴る。 唇で細い肩を食み、耳にキスをする。 一向に目覚める気配のない愛美に耐えかねて、ザイードはシーツの中に滑り込み、背中から愛美を包むようにして抱き締めた。 小さな悪戯から大胆な行動に出たザイードに、愛美は目を閉じたまま、ふふっと思わず笑っていた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!