番外~おお、誇り気高き草原の民よ~(前編)

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「やはり……行くのはよそう…」 「いやよ。行くって決めたんだから」 「逢っても良い話は何一つ聞けんはずだ…っ…」 「それはあなたにとって……ってことでしょ?」 「──…っ…」 「…あ、これがお母様の好きな柄ね。じゃあ包んでください!」 「マナミっ…」 「止めてもだめよ。行くって決めたら一人でも逢いに行くから」 肩に乗ったザイードの手を払い、愛美は気の毒そうに笑う女店主に品物を包んで貰う。 ザイードはそんな愛美の後ろ姿を見つめた。 腹に一人味方を宿しているせいだろうか── 今日の愛美はとても強気な姿勢を見せる。 一言も言い返せなくなったザイードを眺め、女店主は何故か微笑まし気にその二人を見守る。 今のこの二人のやり取りを見ていると、若い時の国王夫妻を思い出す。 王妃よりも気性は大人しいけれど、この妃は芯の強さをしっかりと内に秘めている。 女店主は紙袋に注文以外の品物も詰めて愛美にはいっ!と差し出した。 「お代はよろしいですわ」 「えっ!?だめよそんなの」 「ええ、私からの婚礼祝いと思ってくだされば」 「でもっ…あ!…」 遠慮深く拒む愛美の背後からすっと手が伸びていた。
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