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「スゴい、大正解」
宗太のドヤ顔が可愛くて誉め言葉を重ねると、宗太は途端に照れ初めてモゴモゴと説明を始めた。そんな様子も以前のままで懐かしく、変わらない態度が嬉しい。
「康史くんから聞いただけだよぉ」
私の中で、一瞬にして血管が凍った気がした。
「…康史くんが?」
「んっ」
「…もしかして、幽霊サンタのことも?」
「んっ。あ、内緒だからな?」
無邪気な宗太の後ろに、康史くんが影のようにまとわりついているように見えてくる。
宗太が単純に受け取っているから良いものの、もしかしたら両親の死と重なってトラウマになるかもしれない誤魔化し方だ。配慮が足りないどころじゃない。
そもそも、自分でサンタの真相を暴いておいて、一体何がしたいのか。
その違和感を払拭できぬまま、電車は、隣の駅に着いてしまった。
たじみぃたじみぃ、と呑気な放送が流れる中、重くなった胃を外側から手で温めつつ、温まらず、歩いていく。
駅からまた、バスに乗った。
土岐の家もバスですぐだったが、多治見からのバスは更に短時間だった。
「舞、元気かなっ」
バスを飛び降りながら、宗太は今にも駆け出しそうだ。
私たちが路地を入っていくとすぐに、小さな児童公園があった。
まだ少し遠いこの位置から、じっと目を凝らす。
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