嘘つきが、行く

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「あっ、舞だっ」  宗太の声は、それほど大きくはなかった。  決して、公園にまで響くようなものではない。  それなのに、舞は、こちらへ振り向いた。 「おねぇちゃぁぁああんっっ!!」  泣き叫びながら、こちらに駆けてくる。  まだ私は公園の外。このまま走ってきたら危険だと、私も公園へと足を踏み出したところで。  舞は、後ろから抱き留められた。 「結ちゃん。何で、ここに」  お姉ちゃんお姉ちゃんと連呼しながら体をバタつかせて全身で拘束を拒否する舞を、力でもって押さえつけていたのは、色をなくし能面のような顔をした伯母だった。  父は三人きょうだいの末子で、伯母は紅一点の長子だ。しっかり者で自分にも他人にも厳しい。  そんな伯母に何故と問われてすぐには答えられず、私と伯母は出会い頭から睨むように見つめ合ってしまった。  その剣呑とした雰囲気を払拭したのは、やはり、全く空気の読めていない宗太だった。 「今日、始業式だったんでーすっ」  だから学校が早く終わった、と言いたいことは判る。  しかし伯母の聞きたいことはソレではないだろう。
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