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「気になって、誘拐したんかね」
「誘拐じゃねーよぉ。俺がついていくって言ったんです」
「宗太くんは黙っとりなさい」
伯母の言葉は端的で明快だった。厳しい視線は、他へ移ろうことなく、私に向けられている。
「はい。その通りです。ご迷惑をお掛けして、申し訳ありません」
「姉ちゃんっ」
宗太の声が被さってくる。
私は、宗太を見ることができなかった。
私は間違いなく、意図的に宗太をつれてきた。宗太が睦美さんに連絡すると言い出さぬよう、仕向けてすらいた。
多分、私は…
「電話してくるから、少し待っていなさい」
私から視線を外した伯母は、息を少し漏らして小さなため息を吐き、座敷を出ていった。
「宮須です、こんにちはぁ。連日ごめんなさいね」
電話は座敷からそう遠くない場所に設置されていて、伯母の声は丸聞こえだった。
「いえね、実は、宗太くんが今ウチにいるんやわ。探しとった?ぁぁあ、良かったわぁ。そうそう、遊んでたんだけど。
今日、家に結ちゃんが来てねぇ。…まぁ、そうなのよ。あんまり切ながるから、つい、宗太くんも巻き込んじゃって…そう、それはほんとごめんなさいね、顔見るだけのつもりだったからね。…ぇえ、つい、うっかりしちゃったのよ。
…そうね、やっぱり、きょうだいの情は強いもんでねぇ…」
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