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長くなる雰囲気を作りながら、伯母は意外にこの後あっさり締め括り、夕方までには送っていくと話して電話を切った。
誘拐云々の愚痴をおくびにも出さず、すべて自分の責任だと謝罪しながら丸く納めた伯母の対応に、頭が下がった。
私の卑小さがこれでもかと際立ち、自分勝手さに吐き気までした。
…いや。
迷惑をかけるかもしれないことは、最初から判っていたではないか。むしろこれは、想定範囲内。計画通りとは言いがたいけれど、このまま内省して終了では、意味がない。
「うどんで良いわよね」
電話を終えてから少し時間がかかるなと思っていたら、伯母はどんぶりを三つ運んできた。
私と宗太の前に1つずつ置き、最後の1つは対面に座る自分のところに置く。
箸とお茶も配り、小さな茶碗とフォークを用意しながら
「舞ちゃん、おうどん食べようね」
自分の隣へと舞を誘った。
「はーいっ」
あーい、に聞こえる、頭から抜けるような高い甘え声で返事をして、舞は伯母の隣へ移動した。
自分のどんぶりからうどんをよそう伯母の手を、黙って見ている舞。
確かな信頼関係を、そこに見ることができた。
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