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「結ちゃん。あの約束は、覚えとるかね」
うどんを食べ終わり食器を片付けた後、伯母は先刻より幾分優しい声で口火を切った。
「はい」
「しばらく会わないっていう約束は、別に嫌がらせじゃないんやわ」
「はい、判っています。でも、今度の一周忌にも参加しないっていうのは…」
「ほぅやね…でも、去年、気持ちが安定しなくて入園を見送らせたやらぁ?
最近落ち着いてきたから、今年は舞ちゃんも、幼稚園に通わせてあげたいと思ったんやわ。
結ちゃんたちに会って、余計なことを思い出させたくなかったのよ」
“余計なこと”と言われ、それに怒りを感じつつ、しかし仕方ないとも思え、その自分の納得が哀しい。
「…結ちゃんは昔から“お姉ちゃん”やったもんなぁ…みんなのこと色々考え過ぎて」
「…そんなことないです…」
「あんたがきょうだいのことを心配に思うのは、当然のことだし、逆に安心したわ。葬儀前後のあんたは、追い詰められたような、絶望的な顔していたでねぇ」
そんな風に見られていたのかということよりも、あの時私を見ていた人がいたのかと、驚いた。
そして、伯母の言葉は私の中に深く沈み、重く響いて私を震わせた。
確かに、怒濤の勢いでもって私を飲み込んでいったあの変遷の渦は、私自身も変えてしまった。
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