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「結ちゃんは不安かもしれないけどな、この子らのことは、私たちに任せてほしい。私たちを信頼してちょうだい」
「…その事を、心配には思ってないです。伯母さんは、本当に舞を大切に思って、可愛がってくださっていて、…」
あれこれ考えつつ反論しなければと言葉を続けながら、しかしどんな台詞も発せられなかった。
そのまま、口を閉ざしかける。
その時、
「伯母さん、そうじゃないっ」
宗太の声が部屋に響いた。
「姉ちゃんは、心配なんじゃなくて、ただ俺たちに会いたかっただけなんだよ。なっ?」
最後は、私の方へ顔を向け、真っ直ぐに視線を向けて、私へ同意を求めていた。
宗太の、ある意味自意識過剰な、自信満々で素直な台詞に、私も素直に驚いた。ただ頷くことすらできずに、宗太を見つめてしまう。
「姉ちゃん、そうでしょ?」
慰めるように優しく、でも同時に、否定を認めないという強い主張を感じる声音で、宗太は言葉を重ねる。
「姉ちゃんは、俺たちに会いたかったんだよねっ」
俺を必要としてください、と。
そんな風に聞こえて。
私は思わず、泣いてしまった。
「…うん」
頷いた後も、どんどん涙が溢れてくる。
私たちは、離れてしまった先で、それぞれ楽しく過ごし幸せを掴まなければならない。
それでも、私たちがきょうだいであることを忘れてしまうことなどできず、忘れられていく哀しみを他の何で補完できるものではない。
私は、宗太の“うち”が既に私たちの元の家でないことに今さら衝撃を受け、嫉妬してしまった。
母と一緒でなければ決してご飯を食べようとしなかった舞の隣にいるのが伯母だということも、本当は、本当に、哀しかったのだ。
今、宗太も同じ気持ちだったと判って、それが嬉しかった。
同時に、同じ気持ちだったのに気づいてあげられなかった事が悔しく、自己本意な自分がおぞましかった。
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