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「ゃんっ。平っ田ちゃーんっ!」
私のことか、と、気がつくのに時間がかかってしまった。
ノロノロと、振り返る。
クラスメイトの男子だった。
「やっほ。今日ガッコー、どうしたの?」
「ん。…ちょっと、ね」
「サボりとか、めずらしーな? まぁ、それじゃ、今から一緒にどっか行こうよ」
相変わらずのチャラいノリだ。
「ううん、私は」
「…元気ないじゃん、どうした?
てか、こんなとこで、一人でふらふら歩いてたら危ないでしょ。ほら、取り敢えず隅っこに行こ」
手首を捕まれ、強制連行。
いつもなら払い除ける手を、つい黙って見つめてしまった。今日は拒絶の言葉が出てこない。
改めて見渡せば、ここはもう名古屋駅のコンコースだった。気持ち悪いほどたくさんの人が行き来している。
あの後私は、伯母に多治見駅まで送ってもらって帰ってきていたのだった。
「…菅野くんは、何で私のこと…私のどこが、好きなの?」
何でこのタイミングでこの質問なのか、もう自分でも判らない。
菅野くんには、一学期末ほどからずっとちょっかいを掛けられていた。“好きだ、付き合おう”の一点張りだった。
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