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「ん? 美人なとこ」
軽くサクッと応える菅野くん。
「私、美人じゃない」
「美人だよ。何だろ? 個性派美人? 目の強さが好き」
私の全否定をものともせず、菅野くんはしれっと言い放つ。いつもの調子そのままだ。
ただ、私が、いつものように振る舞えなかった。
「強くなんかない。私はっ。…ただ」
この一年の自分を、自分だと認められなかった。この自分の環境も、自分の回りの人達も、認めることなどできなかった。それだけ。
私の視線の強さはきっと、ただ拒絶の色なのだ。
1年前、受験区は変わらなかったけれど、志望校は変えることになった。学校が変わった三学期、成績が少し下がってしまった為に変えざるを得なかったのだ。
テストの点数は悪くなかっただけに、先生に対して疑心暗鬼になったし、新しい同級生への気持ちも冷ややかなものになった。
その感覚は抜けきらず、私は、アホ高校の学生となった自分など嫌だったし、そんな高校でクラスメイトと話を合わせることなどできず、むしろ話など合わない方がイイ、くらいの気持ちだった。
でも、そんなことにこだわってつまらない毎日を送っている自分こそ、一番嫌だった。
それでも。
私は、吹っ切れなかった。
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