嘘つきが、行く

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 その谷を抜けると、風景はまた雑然とした街になった。その後もう一度山を越えた先にある街が土岐市だった。  およそ一時間の経過が実感としては一瞬で、どことなく現実味が薄い。そんなフワフワした気持ちで、電車をそそくさと降りた。  無駄に広い閑散としたホームも、ついキョロキョロしながら歩いてしまう。  緊張はどんどん高まり、心臓の音が肋骨に響いて痛みすら感じた。歩調も少しずつゆっくりになり、ここまで来て今さら何を躊躇しているんだと自分で可笑しいくらいだ。  何事もなく、改札を抜ける。  知っている顔に会うこともなく、見咎められることもなく、万事順調に遂行できていて、それがむしろ怖かった。  地図アプリで場所とルートを確認する。駅から4キロ程度。歩いても一時間かからないだろうと想定して、私は迷いを振り切り足を踏み出した。   *  *  *  *  *
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