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「姉ちゃんっ?!」
躊躇なく、声がかかった。
私が躊躇している間に、公園で友達と駆け回っていた宗太が私に気付いたのだ。
宗太は、私と目が合ってすぐ、こちらへ走ってきた。
「ビックリしたーっ! 姉ちゃん、どうしたの?」
屈託ない笑顔が以前のままで、危うく泣きそうになってしまう。
「ん。元気かなって」
「何だよ、わざわざそんだけの為に会いに来たの?」
あははっと、笑う声が底抜けに明るくて、それがまた宗太らしい。
このまま二人で帰る家が、まだありそうな気すらしてくる。
「今年は会えないって聞いてた」
「ん。だから」
「だからわざわざ会いに来たのかよー」
また、キラキラと笑う宗太。
まだ宗太は8歳だ。悲しい事故を引きずらず、前向きに強く生活できているのは、その幼さゆえなのかもしれない。
取り残されたような淋しさを噛み締めながらも、その生命力の強さが誇らしく、眩しい。
そしてなぜか私は、口を開いていた。
「今から…」
「? 今から? うち来る?」
今から、の続きなんて、なかった。
宗太への台詞としては想定していなかった。
つい口をついてしまったのは、どういうわけだろう。
それに、“今から”の続きをばか正直に宗太に言う必要なんてない。
それなのに、止められない。
宗太の口にした“うち”という単語が、私の舌を痺れさせている気がした。
「舞の様子も、見に行こうと思うんだ…」
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