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どくんっ、と。
脈が1つ、大きく波打った。
「…な、んで?」
「康史くんが、言ってた」
ひどいッ!
…などと、取り立てて言うほどのものでは、ないのかもしれない。
康史くんは5年生。宗太の生意気な口調を容認しながら子どもじみた話題に調子を合わせるのはまだ難しいだろう。
家庭の事情だって様々だ。
それに宗太のクラスメイトのことを考えても、小学3年生ともなればサンタの真相を知る子が何人もいるだろう。
きっと、良い機会だったのだ。
そう考えても、どうしても、苦々しい気持ちを抑えきれない。
「…そっか」
「姉ちゃんは、知ってた?」
私?!
そういう方向の質問が高校生の私に向けられるのは想定外だった。つい目が泳いでしまう。
「ぅん…この間、ね」
「姉ちゃん、気付くのおっせーよ!」
またけたけたと笑い始めて、しかし、宗太の目は優しい色をしていた。
「大丈夫だよ、姉ちゃん。サンタは、いないけど、いるんだ」
重大な告白をするような、慎重な口調。
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