2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
01 - ゴオン、と重厚な音が
ゴオン、と重々しい音が鳴りひびいて顔をあげると、棺とそれにとりすがる者、うなだれてついてくる者などがいりまじって神殿からでてきた。
彼らを見つめる少年を、いくつか年長の少年が呼んだ。
「アイディーン」
声のしたほうをふりかえると、彼の兄、クールドが困ったように首をかたむける。
「おまえは自分の叔父上が亡くなられても、神官みたいに平静でいられるんだね。叔父上はおまえをことのほか可愛がってくださっていたのに」
「死者は皆、天界へ昇っていくんでしょう。きっと叔父上もそこで安らかにおなりです」
「悲しくないのかい。もう二度と会って話すことはできないのに」
「兄上、亡くなった方のもとに親しい方々が集まるのは、死後の安寧を祈るためでしょう。なげき悲しむことなど、亡くなった方が望みはしないはずです」
クールドは自分こそが悲しみを覚えて顔を伏せた。
「そうかもしれないけど……。父上や母上や、僕が天界へ昇るときにはもっと別な顔をしてほしいな」
彼の弟はもう一度死者の棺を見て、ただうなずいた。
最初のコメントを投稿しよう!