1人が本棚に入れています
本棚に追加
「2人でどこか遠くに行こうか」
私の雇い主さんはそう呟いて私を見つめました。
「なあ、××いいだろう?」
悪いことを思いついた子供みたいな顔をしていました。
「どこまでもお供いたしますよ」
「それじゃあ、どこに行こうか」
「旦那様のお好きな所に」
「困ったな」
そう言いながら私を連れて旦那様は海へと連れて行ってくださいました。
青い海が夕日に照らされてほんのりと橙色に染まっているのをみて故郷の夕日が思い出されました。
旦那様と一緒にただ、ぼんやりと海を眺めておりました。
夕日も沈み辺りが暗くなり始めても私と旦那様は暫く動けずにいました。
明日を迎えたら私と旦那様は一緒にはいられなくなる。わかっているからこそ此処から動けずにいるのです。
「旦那様私のことは気にしなくていいのですよ」
小さくそう呟くと旦那様は何も言わずにそっと私を抱きしめました。
旦那様と私の鼓動が少しずつ混ざりあっていくように感じました。
このまま溶けてひとつになれたらなんてまるでどこかの恋愛小説みたいなことを思いながらも時間は確実に過ぎていき別れの時間に近づいていくのです。
最初のコメントを投稿しよう!