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「忍ぶれど、色に出にけり、わが恋は、物や思うと、人の問ふまで」
古文の授業中、アイツが席を立って凛とした立ち姿で、教科書を読み上げている。京都出身の人間だと思うからか、和歌を詠む姿が、妙に様になっているように思えてしまう。藍谷の深くてよく通る声が教室内で響いていた。
先生に着席を命じられて、そのまま着席する。俺は彼のそっと伏せられた長い睫に彩られた、闇のように暗い瞳を盗み見る。
あれから、俺たちの関係は何も変わることなく、アイツはいつも俺に対して冷たい。こっちが冗談の一つを言っても、まったく取り合うこともなく、淡々と毎日勉強して、本を読んで、誰と話すこともなく静かに生活していた。先日あった高校に入って初めての中間テストでも、当然のようにぶっちぎりで主席で、二位以下を寄せ付ける様子もない。
賢くてイイ子ばかりの高校入学組でも、成績のよさと、容姿の端麗さ、それから、とことん無愛想なのが祟って、本人の望んでいるところではないのだろうけれど、学校中知らないものは居ないくらいの有名人になりつつある。
こないだのことがあってから、俺も何となく気になって彼の様子を見てしまうことが増えている。そうしていると、たまに校内で手紙をもらったり、何だかわからない先輩とかに絡まれたりしていることにきづいた。
大概は、そっけなく冷たい態度で、スルリと、それらをかわしている。冷たいのに、やっぱり美人で、どうしようもないくらい目立っている。クラスでも、サノっち達みたいなことを言い出す奴がいて、そうするとターゲットになるのは、同室で話し掛けやすい俺、ってことになるみたい。
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