第十二章

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 一瞬手を伸ばしたくなるけど、今日ついた中で、一番大きなため息……いや、深呼吸を何度も、何度も……して。  呆れるほど、何度もして。それからアキを寝かしつけて、ベッドの階段を下りる。  そのまま自分のベッドに横になって。もう我慢の限界で、痛いほど起っているソレに触れる。情けないほど、ぬるぬるに下着が汚れていた。 「………みっともね………」  そう思いながらも、欲望が抑えられなくて。頭の中で、ゆりかちゃんがエッチなことをしたり、その顔がアキだったり、さっきのアキの、『もっと……ほしい……』って声が勝手にエロいシチュに変換されて、頭の中に何度も再生されたりする。  半ば呆けた頭で、もういいよ、って認めてた。俺はアキに欲情してるらしい。それもアキに惚れてるから、欲情してるんだ。  そんなどこか敗北感たっぷりな気分で、でも今まで、他の誰かをネタに一人エッチの妄想にしたときよりも、ものすごく気持ちよくて、感じてしまって。声が漏れそうになるのを必死に抑えている。  今俺のベッドのすぐ上に、アキがいて(二段ベッドだからだけど)。それなのに自分はこんな想像をしてて……。絶対俺、ヤバイだろうって思うのに。  想像の中のアキが、俺を受け入れて、甘くてエロい声を上げて。目の淵を赤くして、『慶……もっと、もっと……』って俺を上目づかいに見上げたところを想像した瞬間。 2f1b2f9c-71ff-4322-952f-55c147189b6a 「っ…アキ………」  一瞬声が漏れてしまう。 「……っく………はぁ……ぁぁ……」  荒い息を何度も何度もつきながら達してしまって。すでに汚れていた下着を替えて……アキを想像しながら一人エッチしただけで、今までしたことないくらい、気持ち良すぎて、頭が真っ白になる。  実際の相手が、アキだったら、どんだけ気持ちよくなるんだろ、って考えている自分がいた。  でも次の瞬間、激情が去った後の脳裏は、妙に冷静になっている。 「………あほらし………」  うっわ、俺、何してたんだろう。アキの口調を真似して自己嫌悪に陥る。  全部欲望を吐き出して冷静になったら、同室のクラスメイトの男をおかずにって……自分がありえなさ過ぎて、羞恥心でのた打ち回りたいような気分になる。 「俺、本気で馬鹿じゃね?」  今外に出て叫びながら、百メートルくらい全力疾走したい気持ち。  なんか、さっきの俺、無かったことにしたい。無かったことに……してもいいよね? アキ、寝てるし、気づいてないだろうし……。  なんて馬鹿な自問自答をしていると、携帯のメールが鳴る。
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