第十二章

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 ……まさか、死なせてないよな? その直後、バタバタと新ちゃんとサノっちが入ってくる。 「……うわ、殺した?」  倒れている男を確認して、木刀を持っている土方と、竹刀を持っている俺を見てサノっちが楽しそうに聞く。  新ちゃんは、俺の背中に庇われていたゆりかちゃんの服がボロボロにされているのを見て、そっと自分の着てたコートを脱いで、それで包んでやっている。  ゆりかちゃんの涙がぼろぼろっと零れて。そのまま新ちゃんの腕の中に納まったのを見て、何だか妙に切ない気分になったりして……。 「あ―――。一応、顎あたりを横に払ったから、顎粉砕骨折とか、ま、歯が何本かは確実に飛んでると思うけど、……まあ、死んでねぇんじゃねえの?」  肩に木刀を担いで、ダルそうに土方が言う。戦意喪失させるには、顎をやるのが一番だよな。と、サノっちは何故か少しだけ嬉しそうで。 「一応、頭部だけは避けた……ってことだよな?」  サノっちが、手を伸ばして、土方の頭をいい子いい子と撫でようとして、土方に避けられている。 「……脳震盪は完璧に起こしてそうだけどね」  サノっちは、いい子いい子を諦めて、そのまま、男をつんつんと足先でつついて、意識が完全に無いのを確認してから、横に座り込み、ビニールひもで、ぐるぐると、男の手足を縛る。 「……んで、どうするよ、コレ……」  四人の男と、ゆりかちゃんで、床に伸びている男を見つめる。 「………ったく、しょうがねぇな………」  諦めたように土方が携帯電話を取り出す。 「………土方っす。………すみません、ちょっと………やらかしました。今日は非番ですよね?………ハイ、すみません、高校の校門前まで、来てもらえませんか………」  何か異常に緊張しつつ、携帯電話に向かって、頭を下げている………。はぁ、とため息をつく彼に、 「誰に電話したの?」  と尋ねると、自分が剣道の稽古に行っている警察署で、教えてくれている師匠筋の人だという。もちろん、現役警察官で………。 「………ちょっと………校門まで、迎えに行ってくるわ………」  そう言って、ガックリと肩を落として土方が外に出ていった。
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