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「てか、男子校ってやべぇよな。オンナっ気がなさ過ぎて、学食のおばちゃんでも、いいかって一瞬思っちゃったりするよなあ」
新ちゃんこと、長谷川新太は、ひょいと後ろに視線を向けて、洗い場でがちゃがちゃと皿を洗っている学食のおばちゃんにちらっと視線を向ける。多分新ちゃんの母親より年上かもしんない。もちろん全力で冗談なんだろう、ギャハギャハ笑っている。
「でもなあ、合コンするにしたって、知り合いのジョシもいないしなあ」
サノっちこと、佐野晴臣が横でペットボトルを咥えたまま、手を使わずに飲む。そのままカラになるペットボトルを咥えたまま振り回し、次の瞬間、学食の机に突っ伏す。すでに俺達の皿は全部空になっている。この二人は初等部からの付き合いのある、まあ俺の幼馴染みたいなもんだ。
「出会いが無いんだよな。バイトも禁止だしなあ…………」
そう新ちゃんが言うと、サノっちが咥えていたペットボトルを机において、体を起こしこちらを覗き込む。
「そういや、慶。お前の同室の、主席君」
イキナリ俺に話を振られて思わず物思いから解放される。
「なんだよ? あの勉強バカか?」
「……頭の中身は知らねーけど、あのくらい顔が可愛かったら、ちょっと気の迷い、起こさねえ?」
サノっちがからかう気満々、と言った表情でニヤニヤと笑う。それに対して素で答えてしまった。
「…………は? 何が?」
「いや、学食のおばちゃんよか、かわいいぢゃん」
そう言って、オシャレにセットしている長めの髪をかきあげる。
「俺だったら、毎晩一緒だったらアブねえなあ」
「オトコじゃんか」
「オトコでもさ、この際イイジャン、ってくらっとしそう」
「だよなあ、あのくらい可愛い顔してたら。別にアレでもいいかってさ。ほら、俺たちいつでもタマッテるしな」
と、新ちゃんと二人で笑いあう。
「…………かわいいか?」
『仲良くせんでもええよ』と言い捨てた小生意気な顔を思い出して、眉を顰め言い返した。
「うん。下手なジョシよか、カワイイ」
「うっかりしたら、ヤッチャイそうなくらいカワイイ」
俺の言葉に、二人で顔を見合わせてニヤニヤと笑う。
「ねえよ。アイツ冷たいし、怖えから」
俺がうんざりした顔で応えると。
「いーや、いつか、うっかりヤッチャうね」
そう言って二人がもう一度、爆笑した。
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