0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
漆黒の夜の中
ひそりと輝くものがある
何も届かなかった胸の内
それはそっと現れて
私の闇を照らしていった
どうしようもなく
爛れるほど切なく
ずぶずぶと疼くような悲しみが渦巻いた
どうしようもなく ただ どうしようもなく
息も出来ないほどの苦しみが引き裂くように取り巻いた
もうこれ以上 流れることさえない涙は
ザラザラとかさついて 私に白くへばりついた
剥がれないほど固くへばりついた
言葉と思考は土気色に変色し
ああ もうここまでだ と諦めだけが己を締めつける
無音の闇の中 蠢くのは瘡蓋と膿
これ以上 傷つかないほど傷ついたすべての痕
目の前に広がる
黒く潜まる海を見つめて
ゆっくりと歩を進めてゆく
寄せ返す波を浴びたまま
この闇に溶け込んでしまいたいと思う
それで何もかも解決出来るのではないかと考える
答えを探すのも面倒になった頭の奥は
頷くようにしんと黙る
何もかも消えた淵でひとり
溶けた闇が寄せ返す波の中
時間だけが寡黙に過ぎる
歩を波へと進めようとする視界に不意に訪れたのは
青く光る夜光虫
誰もいないはずの海の中
ゆらり漂う夜光虫
闇の中 静かに点る青い灯は
私のすべてをそっと撫でた
やがて灯は広がりながら
私をそっと包み込んだ
涸れ果てたはずの涙が流れる
なぞるように伝う温かさに胸がトクリと反応する
ああ 私は生きている
そう 生きているのだ、と
感覚が息を潜めた思考を動かす
こんな漆黒の闇の中
かすれて荒みきったはずの景色に
微かな風が吹いてゆく
夜光虫の小さな群れは
私の闇をそっと洗っていった
まだ 生きていていいのだと
そっと青く密やかに囁く
闇にも光は射すのだ と
夜光虫は教えてくれた
私は涙を流しながら
夜光虫を手で掬った
手のひらが美しく青に染まる
小さな小さな灯の群れ
温かな涙は時を動かす
停止していた回路を動かしてゆく
ありがとう
心に言葉が生まれ落ちると
涙は止めどなく溢れていった
ありがとう
ありがとう
どんな闇にも光は点る
夜光虫は静かに語る
私の心を静かに照らす
青く光る希望の群れ
闇は必ず晴れてゆく
光に照らされ晴れてゆく
朝日を待つんだ
朝日を待つんだ
それは必ず帰ってくるから
それは必ず訪れるから
最初のコメントを投稿しよう!