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森に潜み、木にもたれると水筒の水を口に含んだ。ローゼリアの死から一年間、ロレンチーニ商会からの刺客は一日も休まる隙を与えてはくれなかった。しかし、恐らくそれも今日で終わりそうだ。さっき木の上に登って確認してみると、彼女の眠る墓地の周辺には要塞を守る軍隊並の傭兵が集結していた。
ずっと、彼女のことを考えていた。彼女の想いを、彼女の取った行動の意味を。そして自分が彼女のことをどう思っていたのかを。
水筒を捨て、脇に置いていた花束を拾い上げる。彼女の墓石に手向ける赤い薔薇の花束だ。俺の為に自らの命を絶った彼女の想いに答えてやらなければならない。右手に剣を、左手に花束を持って俺は立ち上がった。
身を焦がす、情熱をもって。
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