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セルゲイが俺の対面に座る。
「姫もそろそろ年頃だ。婿を取らせようと思う」
俺は黙って頷いた。
「俺の財力がなかったとしても姫はあの器量だ。すでに大勢の貴族や大富豪から求婚されてる」
その様子は俺も見たことがある。
「しかし、我が娘には本当に愛する者と結婚して欲しい。血や身分には拘らん。儂には血縁関係を結ぶ政略結婚など不要だからな」
そう言ってセルゲイは歯を見せて豪快に笑った。
「そこでだ、姫の婿候補を国中から募り、謁見の間にて姫に面会させようと思う」
「面会ですか?」
「そうだ。婿候補には姫への贈り物を持参させる。姫が成人するまでに姫の心を掴む贈り物をした者を婿にする」
「それで私にその護衛をしろと?」
「その通りだ」お前は物解りが良くて助かる、と酒をあおる。
「男女のことだからな、そばに大勢の護衛がいるのは無粋であろう。お前であれば姫の信頼も厚い。この役目にはうってつけだと思ってな」
俺は少し考え、帯剣すること、姫にあまり近付かせないこと、万が一の時の為に別室に数名の兵を待機させることを条件にこの話を承諾した。もっとも俺に断る権利など元よりなかったのだが。
護衛に関しての細かい打ち合わせが一段落したところでセルゲイが酒を注ぎ足すために席を立った。
「それともう一つ、お前にはやってもらいたいことがある」
セルゲイが円卓にグラスを置く。注ぎたての酒の匂いが俺の所まで届いた。
「姫がもしもくだらん男に騙されそうになったらお前がそれを見定めて止めろ」
俺が怪訝に思ったのに気が付いたのかセルゲイが笑った。
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