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わたしがしんみりとしていると、シンちゃんは何故かわたしの気持ちを読んだかのように思い切り背中を叩いてきた。
「さあ! そんなに時間は無いよ。大丈夫、急ごう!」
「……うん」
わたしは励まされるままに前を向き、また走り出した。
華ちゃんの家が見えてくる。シンちゃんはがんばれ、と小声で言うと、後ろの電柱にするりと隠れた。
大きな一軒家の玄関口。リビングにはまだ明かりがある。時計は持っていなかったけれど、いまは夜の十一時半というところだろう。
ようやくここまで来たのに、やっぱり怖くて気持ちが折れかかっていた。インターホンを押そうかどうか迷っていると、庭の犬小屋からポンちゃんが出てきて興奮気味に吠え出した。そんな場合じゃないのに、ポンちゃんはよく見知ったわたしの顔に嬉しそうに抱きついてくる。
そんなこんなで騒いでいるせいで、華ちゃんがドアから出てきてしまった。
「……しおりちゃん!? なんでここにいるの? しかもこんな時間に、どうしたの」
華ちゃんはパジャマ姿で、今にも寝ようという状態だった。四週間ぶりに見た華ちゃんの姿に、わたしは緊張で声が出ず、下を向いてポチ袋を差し出した。
ポチ袋がわたしの手を離れ、しおりちゃんが受け取った感触がする。
「……あ! お年玉……。やっぱり私、落っことしてたんだ。探してもどこにも無くって諦めてたの。見つけてくれてありがとう」
「違うの。違うの。ごめんなさい」
わたしは震える声で謝った。
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