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どうしようもなくなり、わたしはその場にしゃがみ込んだ。何のことやら分からないのだろう、華ちゃんは黙っている。
「……初詣で、華ちゃんがお賽銭をカバンから出したときね。そのとき華ちゃんがお年玉を落としたのに、気付いてたの。それで拾って渡そうとしたけど、拾って、そのまま返せなくなっちゃった。わたし、今年親戚に会わなくてあんまりお年玉をもらえなかったから。欲しくなってしまったの。本当に、ごめんなさい」
アスファルトに、涙が落ちた。
駄目だ、泣いちゃ駄目だ。そう思っていたら、月明かりがわたしの頭の上から影を落とし、涙の跡を隠してくれた。わたしは涙の筋が頬に流れないように、ずっと真下を向いていた。
ポンちゃんも空気を読んだのか、静かにわたしの顔を覗き込んでいる。少しの間が落ち、やがて華ちゃんが声を出した。
「……ううん。いいよ。だってしおりちゃん、こうして返しにきてくれたんだもん」
そう言ってわたしの両肩に触れる。わたしはなんとか涙を堪えて顔を上げると、そこには優しい華ちゃんの視線があった。
「このお年玉、お婆ちゃんがくれたの。来週から私とお婆ちゃん家は距離が離れてしまうから、特別にいっぱいお金くれて、大事なものだったの。しおりちゃんが気付いて拾ってくれてよかった。ほかの誰かだったら、拾って持っていってしまってたかも」
わたしは首を振った。でも、華ちゃんはそれに負けじと、もっと大きく首を振る。
「しおりちゃん。一年しか一緒にいられなかったけど、いつもわたしに優しくしてくれてありがとう。私、しおりちゃんのこと親友だと思ってた。引っ越して離れても、手紙書くよ。ずっと友達だからね」
「……本当に、ごめんなさい。ありがとう」
わたしは涙を我慢して、華ちゃんに答えた。
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