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今日も眠れず、僕は夜の散歩に出かける。冬の夜は寒いが私は上着を着ない。玄関でスニーカーを履きドアを開けて外に出るが、雪が積もっていなかったか不安を覚えた。けれどこの散歩は転ぶことなどないのだから、靴がなんであれ、上着があるないだのなんて心配する必要などないのだ。
アパートの廊下では切れかけた電球がチカチカと光って目障りだろうな。僕は鍵をかけずにそのまま廊下を出る。雪は積もっていないことにした。
私はまだ布団の中にいる。先程までついていたエアコンも、夜中に乾燥するのが嫌なので、今はおとなしくなっている。それでもわずかに温められた空気がのさばっていて、部屋に満ちている。その温い部屋の温い布団に包まれて、私は散歩をしている。これが私の趣味だ。
住宅街に律儀に並んでいる街灯達が道を照らしているが、3つ、4つ、その先を見ることは難しかった。満月に近いはずの月も私には浮かべることができなかったし、夜道を照らしてくれることもなさそうだ。
僕はあてもなく歩いていたつもりだが、気づけば自動販売機の前にいた。無意識のうちに光に群がる羽虫そのものである気がしたが、そのことには気づいていないことにした。
普段は飲まないブラックコーヒーを買って、その缶に込められた熱を奪うように抱え込む。少し冷めたと思い、私はコーヒーを飲もうとするが、うまくいかない。そうこうしているうちにカフェインの影響とは裏腹に私は睡魔に襲われた。
僕はしめたと思って夜の散歩を続けようと足を進めた。僕の後ろ姿が少しずつ暗闇に溶け込んでいった。
電柱を4つ目を越えたあたりのところから私は僕を見失っていた。朝までには帰ってくるんだぞと言いそびれてしまった。
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