二度目の春

5/13
前へ
/210ページ
次へ
「知ってますよ。でも、俺、行きませんから」 「あのなあ……。お前、拗ねるのもいい加減にしろよ」 「拗ねる?」  怪訝な顔で首をかしげる。こちらの言いたいことが分からないはずはないのに、と、宮田は腹が立つ。 「拗ねてなんていません」 「じゃあ、悩んでる」 「どうして? 俺は、先生が好きで、それ以上でも以下でもなく、別に悩むこともない。拗ねる必要もないです」  反抗的な物言いに、ムカつきが加速する。しかし、落ち着けと言い聞かせて、一つ大きく息を吐いた。自分は教師だ。十六の高校生と同じレベルで喧嘩しちゃいけない。 「入学式に行きたくない理由はなんだ。どうしてここにいる?」 「図書館、好きなんですよ。今なら誰もいないからいつもより静かだし」 「そういう問題じゃないだろう。生徒は全員入学式に参加する義務があるんだ」 「俺一人いなくたって問題ないっしょ」 「言い訳にならないな。スポーツをやる人間が規則を守れないというのはまずいんじゃないのか? そうだろう」 「それはそうっすけど……サボりたかったんで」 「なんでだ?」 「別に……」     
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

454人が本棚に入れています
本棚に追加