宮田のリアル(10)

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「普通に付き合ってて、お父さんだって結婚には前向きで、条件的に何も問題ないじゃん。貴也くんだって私のこと好きって言ってくれたのに。なんで? なんで駄目なの? なんでこんな人」 「失礼なこと言うなよ」  一ノ瀬が彼女の言葉を遮る。有難いが、強く否定も出来ないなと思う。本当に、俺なんかの何がいいんだか。  一ノ瀬はと見れば、俺をまじまじと観察している。なんで好きなのか、改めて考えているのだろうか。いいところがあるって言うなら、俺も知りたい。 「……小学校の時に見た背中に憧れて。高校で先生が赴任してきた時、雷が落ちたみたいだった。見た瞬間、体がしびれてさ。その時は好きとか全然思わなかったけど……きっとあの時、俺の運命は決まったんだ」 「貴也くん、何言ってるの。意味わかんない……」  呆気にとられたような顔で彼女が呟く。気持ちは分かる。衝撃が大きすぎるだろう。 「桐子、ごめん。俺やっぱり先生が好きだから」 「やめて! 貴也くん、自分で言ってたじゃない、『未来なんかない』って! そうよ、男同士で未来なんかあるわけないじゃない!」  口に出した言葉は取り消せない。彼女も、恐らく言ってはいけないことを言ったのだと理解している。けれど、傷ついただろう一ノ瀬は、それでも優しく笑っていた。 「俺に好きな人がいてもいいから、一緒にいたいって言ったよな。俺、桐子に甘えてたよ」     
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