二度目の春

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 目の前の大きな影が急に動き、宮田はふと顔を上げた。その目に一ノ瀬の顔が映る。それは急激に迫り、思わず後ずさった宮田の肩が本棚に押し付けられた。 「なんで……」  苦しげな呼吸の下から、一ノ瀬の低い声が漏れる。 「なんなんだよ? 普通、誰かと付き合って、デートして、キスしたり、えっちしたりして、この子が好きだなって思ってあったかい気持ちになったり、幸せな気持ちになったりさ……『好き』って、そういうんじゃないのかよ?」  突然に問われ、宮田はたじろいだ。何を言われているのか、何を聞かれているのか、咄嗟には理解できない。 「なんで? なんでこんな……苦しいことばっか! もう嫌だ。あんたのことなんて考えたくない。好きでいたくない。忘れたい。悪い夢だ、早く覚めろって毎日思ってんのに! もう、あんたの顔も見たくねえ……!」  一ノ瀬の語調は荒く、宮田の肩をつかんでいる両手に力がこもる。肩の骨が軋むほどの痛みを感じて宮田は思わず顔を歪めた。だがそれにすら気づかず、一ノ瀬はうつむいたまま、唇を噛んだ。     
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