二度目の春

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「なんで……? バスケしてても、遊んでても、家に居ても、誰と居ても、いっつもあんたのことばっか考えてる。なんでか分からない。好きかどうかももう分からない。でも……消せないんだ。どうやっても、忘れられない。考えたくないのに、考えちまう。こういうの、『好き』っていうの? なんなんだよ、これ。もう嫌だ。やめたい。逃げたい。出口なんてないこと、最初っから分かってんだ。どこまで行っても真っ暗闇だ。無理な相手を好きになって、諦めることもできなくて、考えないでいることも出来ない。俺は、どうすりゃいいんだよ。なあ、教えてくれよ!」  のらくらとかわしていた時と打って変わった、せきを切ったような一ノ瀬の激しさに、宮田は雷に打たれたような気がしていた。 ――これほど苦しんでいたなんて、思いもしなかった。  息を切らして自分を見つめる一ノ瀬を、宮田はまっすぐに見つめ返した。長いようにも短いようにも感じられる数秒が流れ、やがて宮田は静かに言った。 「俺が間違ってた」 「……え?」  怪訝な顔の一ノ瀬は、宮田の顔が急速に凍るように冷たくなっていくのを見た。 「俺はな。お前の事が嫌いだ。お前が俺を好きとか言うのも嫌だ。金輪際、こういう話はするな。分かったか」 「……せん、せ、い……」 「離せよ」  両手を宮田の肩に置いたまま、一ノ瀬は動かない。唖然とした表情のまま、一ノ瀬は固まっていた。宮田は冷たい声で繰り返した。 「離せ」 「あ……はい……」  立ち尽くす一ノ瀬を邪険に払いのけ、宮田は本棚の間から抜け出した。窓から差し込む柔らかな日差しを背に、宮田は暗がりの中に立ち尽くす一ノ瀬を振り返る。 「これ以上、お前と個人的に話すことはない。じゃあな」  宮田はそう言い放ち、その勢いのまま歩み去った。後に残された一ノ瀬は、ただ奥歯を噛みしめていた。
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