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1.告白
高校の入学式があった日の午後。
誰もいない教室。
「俺と付き合って欲しいんだけど」
及川安紗美が目の前の男子生徒からそう言われたとき、真っ先に何かの冗談かと思った。
「…………は?」
「聞こえなかった? 俺と付き合って欲しいって言ったの」
(聞こえてる。聞こえてるから耳を疑ったんだ)
と安紗美は心の中で呟いた。
だって二人きりの教室で、あの月本瞬に告白されたのだから。
安紗美は、さきほど行われた入学式で瞬が新入生代表の挨拶をしたのを見ていた。だから顔と名前だけは知っていた。
新入生代表ということは、安紗美たち新一年生の中でいちばん成績がよかったのだろうということ。
そしてえらく目立つ外見をしていたので、よく覚えてる。
「……」
安紗美は目の前に立つ瞬をじっと凝視した。
長めに伸ばした銀色の髪。
髪と同じ銀色の長いまつ毛と、鮮血のような色をした赤い瞳。
ツンと尖った薄いくちびる。
細くて形の整った顔。
細身なのに筋肉質な首や手首を覗かせる、長身の身体。
(日本人の名前なのに、なぜ髪が銀色? なぜ目が赤い?)
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