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「何、敵意は感じない。怖ければさっさと逃げるが良い。………………怖くないのか、だと?怖くなどないとも。僕は犬は好きだぞ。彼らは忠実な友に成りうる。………上下関係を判らせるのが少々手間な場合もあるが。………………さて、待たせたな諸君。食事にしよう。」
「早っ。」
いつの間にか少女は解体を終えて、そこには手頃な大きさに切り分けられた元ドラゴンの肉塊とおびただしい量の血、そしてドラゴンの骨格が横たわっていた。剥ぎ取った革と鱗は無造作に骨格の前に積まれている。
この子、何者なのかしら………?
少女が炙った肉を口に運ぶ傍ら、数匹のウルフが肉に食いついている。
「………見てないで君も食べたらどうだ?」
「………良いの?」
「不都合なら奨めるものか。案外旨いぞ。」
その言葉に釣られて、恐る恐る差し出された肉に手を伸ばす。
「………本当だ。案外美味しい。」
「………………さて、腹ごしらえも済んだ。道を探すか………………………ansuz。」
聞いたことのない単語を少女が呟く。
「待ってちょうだい。」
「今更なんだ?」
「ここから一番近い町に通じる道なら、8時の方向に歩けば5分ほどで出られるはずよ。」
「そうか。情報提供、感謝する。」
道を教えたら、さっさと歩いていってしまった。
不思議な魔法の使い方といい、傷ひとつ受けずにドラゴンを殺す腕前といい、謎が深まるわね………。
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