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目覚めたとき、男は一人、真っ暗な空間にいた。
「死後の世界など信じてはいなかったが……ずいぶん殺風景だな。」
「確かに貴方は死にましたが、厳密にはここは死後の世界ではないですよ?」
「誰だ!」
振り向き様に手刀で突きを繰り出す。視線の先には、尻餅をついた、ある一点を除けば普通の、かわいらしい少女がいた。
「ひっ……!」
「……脅かして済まなかった。生前の癖でつい手が出てしまう。それで、君は誰だ?僕は朧。嵐山朧と言う。」
「……ミカエルです。」
「そうか。次の質問だが、ここは何処だ?何故僕はここにいる?」
「ここは……天界です。天界の、贖罪の間と呼ばれる場所です。貴方は」
「多くの罪を重ねているからここに来た。と言ったところか。」
「なんで分かったんですか!?」
「この場所の名前を聞けば大体わかる。道理を以て言うなら、確かに僕は悪人だろう。……何人殺したか、もう僕は思い出せない。」
後れ馳せながら、少女の特異な容姿について説明を挟もう。……まぁこの手のファンタジー小説を読み漁っているだろう読者諸氏なら、名前を聞いた時点で凡そ見当が付くだろう。……翼が生えている。一対の、白い翼が。
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