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「うおおお!?」
放たれた弾丸は全て地面を穿ち、ミサイルは周囲の建物に命中したが一発たりとも爆発しなかった。
「………再現した兵器にも、神の掛けた呪いは有効なのか。一つ収穫だな。全く、常々神という奴は傍迷惑なことをしてくれる。」
虚空を蹴り、宙を走りながら毒を吐く。
「それはそれとして…行く宛もないが飛び出してしまったな。どうしたものか………。」
『ふむ、たった五時間の間に面白いことになっておるな。神使よ、儂らと離れてからいったい何があったのだ?』
ふわふわと現れた茶色い蝶を一瞥し、静かに嘆息する。
「茶色い羽虫…いや、土の精霊王か。」
『待て貴様、今儂を羽虫呼ばわりせんかったか!?』
「気のせいだろう。何、たいしたことはない。何度か死にかけただけだ。常人なら落下死確実な高さから落ちたがなんともない。」
『………お主、それはなんともないとは言わん。』
「たしかに、肋は砕け肺に刺さり、首もあらぬ方向に曲がっていた。神経も傷ついていたことは想像に難くない。だがな。僕の体は、それでも死なぬのだ。折れていたはずの首を力ずくで正しい向きに直すと、直ぐ様傷ついていたはずの神経が治り繋がった。臓腑を傷つけていた肋は有るべき位置に収まり繋がり、穴だらけだった肺もすぐに元通りだ。」
『………神使。何がお主をそこまで死に急がせるのだ?』
「知れたこと。万物に対する拒絶だよ。こうして生きていることすら呪わしいから、自ら死を欲するのさ。」
『………おのれの存在さえも否定するか。』
「そうとも。僕は地獄も天国も人の妄想と思っていた。吊るされてからあった神を名乗る何かに否定されたがな。」
『かか、我等とて神を盲信しておるわけではない。神とは言わば恐怖の具現、人が理解できぬものを恐れる本能の産物よ。』
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