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音もなく咆哮をあげて倒れこんだドラゴンの目は、すぐに光を無くした。
「(拒絶、解除。)手荒な真似をして済まない。怪我はないか?」
「貴女こそ。助けてくれてありがとう。……さっきの、一体どうやったの?」
「企業秘密だ。」
「そう……。あ、そういえば名乗ってなかったわ。あたしはセレナ。貴女は?」
「……幽璃。ひとつ教えてほしいのだが、どちらの方向に歩けば町に着く?空間転移の実験をしていたが、失敗してしまってこの始末だ。」
「ユーリ?変わった名前ね……?あ、ごめんなさい。町に続く道、だったわね?着いてきて。」
「僕に君と同行する理由はない。どちらに歩けば街道に出られるかを教えてくれればそれで良い。」
「いいからいいから。それに、“君”じゃないわ。セレナって呼んでちょうだい。」
「(鬱陶しいな……ここで殺してしまおうか?)聞こえなかったか?ならもう一度、言い方を変えて言おう。どちらに歩けば街道に出られるか教えろ。」
「助けてくれたことは感謝してるけど、そんな高圧的な言い方しなくて良いでしょう。さすがに怒るわよ?」
「……教える気はない、か。なら、答えなくて良い。」
会話を一方的に打ち切り、手近な木から何本か枝を折り取る。
「……ちょっと、一体何を始めるつもり?」
「教える理由はないな。……こんなものか。Kano!」
集めた枝にルーンを使って火を灯す。
抉り獲った心臓から血を抜いて、火で炙る。
「まさか、それ食べるの?」
「……いつまで僕に付きまとうつもりだ?……丁度良い、あの蜥蜴を解体する。手伝え。」
「え……?ちょ、待って、無理無理無理。」
「……ふん。なら疾く失せろ。…………うん、そろそろ火が通ったか。」
念入りに洗浄した木の枝を串代わりに焼いた心臓にかぶり付く。
「………少々鉄臭いが、なかなかいけるな。血抜きが足りなかったようだ。……なんと言うか……魚と鶏の中間のような味だな。」
心臓を食べきった後、死体に歩みより解体を始める。
………なんなの?この子。ドラゴンと出会して死を覚悟した私を救ったその少女は、表皮に傷ひとつつけずに抜き取った心臓を食べた後、私に目もくれずドラゴンを解体している。
「居るのは分かっている。解体が終わるまで待て、手を出せば殺すぞ犬ども。」
………え?
「囲まれてる危険な状況で何を悠長に解体なんかしてるのよ!?」
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