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「ああ、アツシが気に入ったんなら。俺はこの間見せてもらった時に気にいってたし、いいんだけど。」
拓海はオレの方を向くと、頷きながらそう言った。
「お二人は中学からの友人なんですってね?!長く付き合えるのって羨ましいわぁ、年頃だし、彼女とかもいるんでしょうに。」
奥さんが、リビングのテーブルにお茶を置きながら言ったが、一瞬オレと拓海と森口さんの三人で顔を見合ってしまう。
拓海は、森口さんにオレとの事を言ったらしいが、この時、本当に言ってしまったんだと分かった。口を一文字にして、目だけを見開いた森口さんの顔が、痛い所を突かれた様な顔をしたから。
「っま、そういう事は、プライベートな事だからなぁ、今どきは会社でも、そんな事言ったらパワハラとか言われるんだぞ。気を付けなさいよ、ママ。」
そう言って、ソファに腰を降ろすと奥さんを窘めた。なかなか苦しい返答をして、このまま奥さんには言わずにいた方がいいんだろうと思う。森口さんの為にも.....。
「なんか、自分とアツシは、離れても又一緒になってるっていうか、.........、結局二人でいるのが心地いいんですよね。ケンカみたいになって離れても、自然と巡り会うっていうのか。」
「ああ、分かる気がするわぁ。きっと、目には見えない何かに引き寄せられてるんでしょ。まあ、彼女は慌てて作らなくてもねぇ、二人ともイケメンだし、100人の中から選んだらいいわよ、ほほほ、」
拓海の言葉を聞いて、奥さんはあっけらかんと笑ってオレたちを見る。
ふくよかなその顔立ちには、邪な感情とか無くて、少しだけ悪い事をしているような気持ちになるが、森口さんもホッとしたのか、お茶を飲むとソファに身体を沈めて安堵の表情を浮かべた。
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