50

3/9
前へ
/188ページ
次へ
 「ああ、アツシが気に入ったんなら。俺はこの間見せてもらった時に気にいってたし、いいんだけど。」 拓海はオレの方を向くと、頷きながらそう言った。 「お二人は中学からの友人なんですってね?!長く付き合えるのって羨ましいわぁ、年頃だし、彼女とかもいるんでしょうに。」 奥さんが、リビングのテーブルにお茶を置きながら言ったが、一瞬オレと拓海と森口さんの三人で顔を見合ってしまう。 拓海は、森口さんにオレとの事を言ったらしいが、この時、本当に言ってしまったんだと分かった。口を一文字にして、目だけを見開いた森口さんの顔が、痛い所を突かれた様な顔をしたから。 「っま、そういう事は、プライベートな事だからなぁ、今どきは会社でも、そんな事言ったらパワハラとか言われるんだぞ。気を付けなさいよ、ママ。」 そう言って、ソファに腰を降ろすと奥さんを窘めた。なかなか苦しい返答をして、このまま奥さんには言わずにいた方がいいんだろうと思う。森口さんの為にも.....。 「なんか、自分とアツシは、離れても又一緒になってるっていうか、.........、結局二人でいるのが心地いいんですよね。ケンカみたいになって離れても、自然と巡り会うっていうのか。」 「ああ、分かる気がするわぁ。きっと、目には見えない何かに引き寄せられてるんでしょ。まあ、彼女は慌てて作らなくてもねぇ、二人ともイケメンだし、100人の中から選んだらいいわよ、ほほほ、」 拓海の言葉を聞いて、奥さんはあっけらかんと笑ってオレたちを見る。 ふくよかなその顔立ちには、邪な感情とか無くて、少しだけ悪い事をしているような気持ちになるが、森口さんもホッとしたのか、お茶を飲むとソファに身体を沈めて安堵の表情を浮かべた。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

376人が本棚に入れています
本棚に追加